階段の寸法とは? 決まりや各名称などの基礎知識を解説!投稿日:2023.12.28 更新日:2023.12.28
階段の寸法は、建築基準法で安全を確保するための基準が定められており、安全性を考慮した設計が求められます。また上りやすい階段を実現するためには、階段の寸法や形状を適切に調整することが大切です。
本記事では、階段の各名称を紹介するとともに、階段の寸法に関するルールについてご紹介します。
目次
階段の寸法には建築基準法上のルールがある
階段の寸法は、建築基準法によってルールが定められています。寸法の基準が定められているのは、階段の幅や踊り場の幅、蹴上、踏面の4つです。また階段の寸法は、一般住宅や学校、公共施設など、設置される建物の用途によっても異なります。
階段の名称
階段には、それぞれ決まった名称があります。階段の部位の名称は、主に以下に挙げる3つです。
名称 |
概要 |
踊り場(おどりば) |
階段の途中にある平面で、踏面よりも広くなっている部分 |
蹴上(けあげ) |
階段の段(横幅)と段(縦幅)の間にある垂直の部分 |
踏面(ふみづら) |
階段を歩くときに足が着地する平面 |
それぞれ、階段の図面や模型などでも用いられる名称です。階段の構造や機能を理解するためにも覚えておくとよいでしょう。
階段の種類
階段の種類は主に以下の4つがあり、それぞれ特徴が異なります。利便性や設置にかかるコストなどを考慮して、どの形状の階段にするかを決めましょう。
直階段
直階段は折り返しがなく、まっすぐ上り下りするタイプの階段です。シンプルなデザインで、一般的な住宅などに多く採用されています。転倒時に下まで滑り落ちるケースを想定し、手すりや滑り止めを設置したり、踊り場を作ったりすることもあります。
らせん階段
らせん階段は、踏面がらせん状に配置されており、回りながら上り下りするタイプの階段です。デザイン性が高く、素材によって雰囲気が大きく異なる点が特徴で、住宅で採用するケースも多いようです。また、比較的狭いスペースにも設置できるため非常用階段などに用いられることもあります。
かね折れ階段
かね折れ階段は途中で90度に曲がっているL字型の階段で、曲がり角には踊り場があります。直階段と比べるとスペースが必要で、費用も割高です。デザイン性を重視する場合などは、骨組みが見えるスケルトン階段として設置することもあります。
折り返し型階段
折り返し型階段もかね折れ階段と同様、途中で踊り場があるタイプの階段です。折り返し階段の場合は、曲がり角の踊り場からU字型に180度曲がります。学校や商業施設などでよく見られる階段です。
建築基準法で決められた階段の基準
建築基準法で決められた階段の寸法基準は住宅用の屋内階段の場合、以下の通りです。
- 階段および踊り場の幅:75cm以上
- 蹴上:23cm以下
- 踏面:15cm以上
まず踏板の幅は、足を置くスペースを確保するために必要な長さとなっています。次に蹴上の高さは、階段を蹴り上げて上り下りする際に、足が蹴上に引っ掛かりにくい高さと考えましょう。踏面は階段を歩く際に、転倒のリスクを考慮した長さが定められています。
さらに屋外階段(直通階段)の場合、階段および踊り場の幅が90cm以上、その他のものにあっては60cm以上と定められています。
なお、これらの基準はあくまでも最低限の基準です。より安全な階段を設計するためには基準を満たしつつ、実際に使用される状況や利用者の特性を考慮して、適切な寸法や形状を検討する必要があります。
また、階段は勾配にも注意が必要です。階段および踊り場の幅、蹴上、踏面の基準が守られていたとしても、階段の勾配が急すぎると、転倒などの危険性が高くなります。
※参考:e-Gov法令検索.「建築基準法施行令」.“第三節 階段/(階段及びその踊場の幅並びに階段の蹴上げ及び踏面の寸法)/第二十三条”.https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=325CO0000000338_20230526_504CO0000000393 ,(参照2023-12-19).
上りやすい階段の寸法とは
建築基準法上の階段の寸法は、あくまでも安全を確保するための最低限の基準です。より快適に階段を上り下りするためには、急勾配になっていないかを配慮するとともに、実際に上りやすい階段寸法であるかどうかも確認する必要があります。
上りやすい階段寸法は、一般的に以下の式で算出します。
- 蹴上×2+踏面=60cm
例えば、蹴上が15cmの場合、登りやすい踏面の長さは以下の通りです。
- 15cm×2+踏面=60cm
- 踏面=60cm-30cm
- 踏面=30cm
この階段の場合、蹴上15cmに対し踏面が30cm程度だと比較的バランスが良くなり、上り下りしやすくなります。なお、この計算方法はあくまでも目安です。実際には、階段の長さや利用者の特性なども考慮して、適切な寸法や形状を検討する必要があります。
具体的には、以下の点に注意するとよいでしょう。
- 階段の長さが長い場合は、踏面を広くする
- 利用者に子どもや高齢者、障がい者がいる場合は、蹴上を低くする
- 階段の両側に手すりを設ける
上りやすい階段を設計することで、安全性や快適性の向上につながります。建築基準法で定められた数値を守るのはもちろん、階段を作るスペースやコストにも留意しつつ、適切な階段寸法を算出しましょう。
【まとめ】
階段の寸法は建築基準法だけでなく、利用者や設置場所などを考慮して設計しよう
本記事では、階段の寸法の決まりや階段の各名称といった基礎知識などについて解説しました。
階段の寸法は、建築基準法で最低限の基準が定められています。この基準は、階段の安全性を確保するために定められているものです。しかしより快適に階段を上り下りするためには、基準だけに捉われない使いやすさの観点も大切です。
建築基準法で定められた寸法を守り、なおかつ利用者の特性や階段を設置するスペース、コストなどを考慮して、建物に適した階段を設計しましょう。